「身体に不自由があるけれど、これからどうやって生活を支えていけばいいんだろう…」
「手続きが難しそうで、自分にどんなメリットがあるのか想像がつかない」
そんな不安を抱えていませんか?身体障害者手帳は、決して「障害があるという証明」だけのものではありません。あなたが社会の中で自分らしく、安心して暮らしていくための「公的なサポートを受けるための鍵(パスポート)」です。
【この制度のポイント】
経済的な負担がグッと軽くなる(医療費の助成や税金の割引、交通機関の割引など)
福祉サービスが使いやすくなる(車椅子の購入費補助やリフォームの助成など)
就職の選択肢が広がる(障害者雇用枠での応募が可能になり、定着支援も受けられる)
1.制度の概要
身体障害者手帳とは、身体に一定以上の障害がある方に対して、都道府県知事(または政令指定都市・中核市の市長)が発行する証書です。
この制度の目的は、「障害のある方が、自立して日常生活や社会活動に参加できるようにすること」にあります。法律(身体障害者福祉法)に基づいて運用されており、国や自治体、民間企業が提供するさまざまなサポートを受けるための「身分証明書」のような役割を果たします。
手帳には「1級」から「6級」までの等級(障害の重さのランク)があり、数字が小さいほど障害の程度が重いと判断されます。この等級によって、受けられるサービスの内容や金額が変わる仕組みになっています。
2.支援の内容
手帳を持つことで受けられる支援は、多岐にわたります。ここでは代表的なものを整理しました。
① 経済的なサポート(割引・減免)
もっとも実感しやすいメリットは、家計の負担が減ることです。
- 公共交通機関の割引: 鉄道(JRなど)、バス、タクシー、航空券の運賃が割引になります(多くの場合50%OFF)。
- 税金の控除(こうじょ): 所得税や住民税が安くなります。また、自動車税が免除されるケースもあります。
- 公共施設の利用料: 国立公園、美術館、映画館などの入場料が割引、あるいは無料になります。
② 福祉サービスの利用
日常生活を便利にするための道具や環境を整える支援です。
- 補装具(ほそうぐ)の支給: 車椅子、義足、補聴器などの購入や修理にかかる費用の大部分が補助されます。
- 日常生活用具の給付: 特殊寝台(介護用ベッド)や入浴補助用具など、生活を助けるアイテムの支給を受けられます。
- 住宅改修費の助成: 手すりの設置や段差の解消など、自宅のリフォーム費用の一部を自治体が負担してくれます。
③ 医療費の助成
医療費の自己負担を軽減することができる、「自立支援医療」があります。
以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
3.対象となる人
身体障害者手帳は、病気やケガによって「身体の機能が一定期間、永続的に(ずっと)制限される状態」にある方が対象です。
具体的には、以下の部位に障害がある場合に検討されます。
- 視覚障害: 視力や視野(見える範囲)が極端に狭い。
- 聴覚・平衡機能障害: 耳が聞こえにくい、または体のバランスを保つのが難しい。
- 音声・言語・そしゃく機能障害: 言葉を発することや、食べ物を飲み込むことが難しい。
- 肢体不自由(したいふじゆう): 手、足、体幹(背骨など)が動かしにくい、または欠損している。
- 内部障害: 心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝臓の機能障害。
単に「病気にかかっている」だけでは対象になりません。「その病気によって、どれくらい日常生活に支障が出ているか」が基準となります。また、症状が固定(これ以上良くも悪くもならない状態)している必要があります。
4.申請先と必要なもの
手続きは、お住まいの市区町村の**「障害福祉窓口(福祉課など)」**で行います。
申請から手帳が手元に届くまでは、通常 1ヶ月〜2ヶ月程度 かかります。「今日申請して明日もらえる」というものではないので、早めの準備が大切です。
5.利用する際の注意点
① 「更新」や「再認定」がある
障害の状態が変わる可能性がある場合、数年ごとに「再認定(見直し)」が行われることがあります。期限を過ぎるとサービスが受けられなくなるため、手帳に記載された時期を確認しておきましょう。
② 入院中の食事代などは対象外
医療費の助成があっても、入院中の「食事代(食費)」や「差額ベッド代(個室代)」は自己負担になることがほとんどです。
③ 他の制度との優先順位
65歳以上の方は、原則として「介護保険制度」が優先されます。例えば、車椅子を借りたい場合、障害福祉の制度ではなく介護保険のケアプランの中でレンタルすることになります。
④ 自治体による「上乗せサービス」の違い
手帳による割引や助成は全国共通のものもありますが、タクシー券の配布や水道料金の減免などは自治体によってルールがバラバラです。引越しをした際は、新しい役所で必ず「何が受けられるか」を再確認してください。
6.よくある質問
- Q手帳を持つと、周囲に「障害者」だとバレてしまいますか?
- A
いいえ、自分から提示しない限りバレることはありません。
手帳を持っていることを職場や学校に報告する義務はありません。サービスを利用したい時(電車に乗る時や、税金の申告をする時など)にだけ提示すればOKです。プライバシーは守られていますので、安心してください。
- Q症状が軽いのですが、申請しても意味がありますか?
- A
ぜひ検討してみてください。
「自分より大変な人がいるから…」と遠慮される方が多いですが、手帳は「今の不便さを補うためのツール」です。6級(もっとも軽い級)であっても、所得税の控除や公共交通機関の割引は受けられます。経済的なゆとりが心のゆとりにつながることも多いですよ。
- Q診断書を書いてもらえば、必ず手帳はもらえますか?
- A
審査があるため、100%ではありません。
医師が「該当する」と判断して診断書を書いても、都道府県の審査(専門部会)で「基準に達していない」と判断されるケースも稀にあります。まずは主治医に「自分の状態で手帳の申請が可能か」をしっかり相談するのが近道です。
7.まとめ
身体障害者手帳は、あなたが抱えている「不自由さ」を社会がサポートするための正当な権利です。
手続きは少し手間がかかりますが、一度手帳を手にすれば、日々の移動や医療費、そして将来への不安が確実に軽くなります。「自分に当てはまるのかな?」と少しでも思ったら、まずは役所の窓口でパンフレットをもらうところから始めてみてください。


