「重い障害があるから、家で暮らすのは無理だと諦めている」
「家族の介護だけでは限界。でも、施設には入りたくない」
そんな切実な思いを抱えていませんか?重度訪問介護(じゅうどほうもんかいご)は、重度の身体障害や知的障害、精神障害がある方が、自宅で自分らしく、そして安全に生活を続けるための「究極のサポート」といえる制度です。
最大の特徴は、ヘルパーが比較的長い時間そばにいて、日常生活のあらゆる場面を「まるごと」支えてくれる点にあります。この制度があることで、たとえ常に介護が必要な状態であっても、一人暮らしを実現したり、社会参加を楽しんだりすることが可能になります。
【この制度のポイント】
長時間の「見守り」と「介助」がセットで受けられる(食事や入浴だけでなく、外出や夜間の見守りも対象です)
入院中もヘルパーの支援が受けられる場合がある(特定の条件を満たせば、病院内でもいつものヘルパーさんに頼めます)
「本人のやりたいこと」に柔軟に対応してくれる(決まった家事だけでなく、その時々のニーズに合わせた支援が可能です)
1. 制度の概要
重度訪問介護とは、障害者総合支援法に基づき、常に介護を必要とする重度の障害者に対して提供されるサービスです。
通常の「居宅介護(ホームヘルプ)」が「30分で着替え」「1時間で入浴」といった細切れの支援であるのに対し、重度訪問介護は「数時間から24時間体制」で、生活全体を包括的にサポートします。
この制度の目的は、「重度の障害があっても、地域社会の中で一人の人間として当たり前に暮らす権利を保障すること」です。単なるお世話係ではなく、利用者の「手足」となって、その人が望む生活を実現するパートナーとしての役割を担います。
2. 支援の内容
重度訪問介護のサポート範囲は非常に広く、家の中に留まりません。
① 日常生活のあらゆる介助
- 身体介護: 入浴、排せつ、食事、着替え、体位変換(寝返りなどのサポート)。
- 家事援助: 掃除、洗濯、調理、買い物。
② 外出時の支援
- 散歩や買い物、映画鑑賞、役所の手続きなど、外出に伴う移動や先々での介助を行います。これにより、社会とのつながりを維持できます。
③ 見守り・緊急対応
- 常にそばにいて、発作や急な体調変化がないか見守ります。人工呼吸器の管理が必要な方のケア(医療的ケア)が含まれることもあります。
④ 入院中の利用
- 重度の障害がある方が入院した際、病院の看護師だけでは対応しきれない「本人特有のコミュニケーション方法」や「食事のこだわり」などをサポートするために、いつものヘルパーを派遣できる仕組みがあります。
【所得区分による自己負担の目安(1ヶ月あたり)】
長時間のサービスですが、負担額には上限があるため安心です。
| 所得区分 | ひと月の負担上限額 | 備考 |
| 生活保護受給世帯 | 0円 | 自己負担なし |
| 住民税非課税世帯 | 0円 | ほとんどの障害者本人がこちらに該当 |
| 一般(市町村民税課税) | 9,300円〜37,200円 | 世帯年収により変動 |
3. 対象となる人
重度訪問介護を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 障害支援区分が「区分4」以上であること
- さらに、以下のいずれかに該当すること
- 二肢(両手や両足)以上に麻痺がある、またはそれに準ずる状態
- 区分認定の調査項目のうち、歩行・移乗・排尿・排便のいずれかで支援が必要(身体障害の方)
- 知的障害や精神障害があり、行動上の著しい困難(行動援護の対象になるような状態)がある
以前は主に「肢体不自由(体が動かない)」の方が対象でしたが、現在は「知的障害」や「精神障害」により常に目が離せない状態にある方も対象に含まれるようになり、支援の幅が広がっています。
4. 申請先と必要なもの
手続きはお住まいの市区町村の「障害福祉窓口(福祉課など)」で行います。
- ①相談
窓口で「重度訪問介護を検討したい」と伝えます。
- ②認定調査
80項目以上の調査が行われ、どれくらい支援が必要な状態かを判定します。
- ③支給決定
調査結果をもとに、月に「何時間」利用できるかが決定されます。
- ④事業所との契約
サービスを提供してくれる事業所(ヘルパー派遣会社)を探し、契約を結びます。
5. 利用する際の注意点
① ヘルパーの確保が難しい場合がある
重度訪問介護は長時間かつ高度なスキルを要するため、事業所によっては「ヘルパーが足りなくて派遣できない」と言われることがあります。複数の事業所を当たったり、相談支援専門員に協力してもらったりすることが不可欠です。
② 医療的ケアのルール
「痰(たん)の吸引」や「経管栄養(鼻などからの食事)」といった医療的ケアは、一定の研修を受けたヘルパーのみが行えます。誰でもできるわけではないため、事前確認が必要です。
③ 「やりたいこと」の制限
通勤、通学、営業活動(仕事中)の介助は、原則としてこの制度の対象外となっています。ただし、自治体独自の制度でカバーできる場合もあるため、確認してみましょう。
6.よくある質問
- Q一人暮らしをしたいのですが、24時間ヘルパーをお願いできますか?
- A
自治体の判断によりますが、可能です。
「区分6」などの重度の方で、夜間も介護が必要な場合、24時間の支給が認められるケースがあります。一人暮らしを実現している重度障害者の方は全国にたくさんいらっしゃいます。
- Q家族と同居していても使えますか?
- A
はい、使えます。
家族が仕事に行っている間や、夜間に家族が休むための時間を確保するために利用するケースも非常に多いです。家族の「共倒れ」を防ぐためにも有効な制度です。
7.まとめ
重度訪問介護は、障害を「克服すべきもの」としてではなく、「サポートがあれば解決できる個性」として捉え、あなたの生活を根底から支える制度です。
「重い障害があるから、自由に生きるのは無理だ」と諦める必要はありません。この制度を賢く使うことで、行きたい場所に行き、会いたい人に会い、自分だけの空間(自宅)でくつろぐ権利を手にすることができます。
まずは、あなたの理想とする生活を、相談支援員や役所の窓口で語ってみてください。その「願い」こそが、制度を動かす第一歩になります。



